表題番号:2023C-578 日付:2024/03/05
研究課題カナダのグローバル・シティズンシップ教育における先住民族学習に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 平山郁夫記念ボランティアセンター 講師 由井 一成
研究成果概要
本研究では、カナダのグローバル・シティズンシップ教育における先住民族学習について、特にブリティッシュ・コロンビア州、アルバータ州、オンタリオ州の新カリキュラムに焦点を当て、分析を行った。

カナダのグローバル・シティズンシップ教育はKから12まで、主に社会科の中で扱われる傾向にある。カナダは連邦の教育省が存在せず、各州に教育自治に関する権限が委ねられているため、教育カリキュラムは州ごとに異なる。

2015年の『カナダ真実和解委員会勧告』(Truth and Reconciliation Commission of Canada Calls to Action)第62項において先住民教育の必修化が掲げられた。そこで上記3州についての新しいカリキュラムを分析し、現地の研究者へのインタビューなどを通して、以下の点が明らかとなった。

オンタリオ州では、支配と被支配の関係を超え、先住民族に畏敬の念と社会的包摂を意識した内容が示されており、より対等な関係性が促進される方向性がうかがえる。ブリティッシュ・コロンビア州では、先住民族に関する教育を全学年、全科目で扱う取り組みが進み、先住民教育が自然に組み込まれるような形に変化している。アルバータ州では、先住民をマイノリティや弱者ではなく、対等以上の関係性を認め、尊重する姿勢が示されている。

今後は各教育委員会がこれらのカリキュラムをどのように解釈し、実際の教育にどう取り入れていくか、教材の分析などを行う中で明らかにすることが求められる。

なお研究の成果については、日本国際理解教育学会第32回研究大会(2023年7月1日~2日開催)および日本シティズンシップ教育学会第4回大会(2023年12月9日開催)において発表を行った。また日本教育実践研究所紀要第2号に投稿を行い、掲載予定となっている他、日本シティズンシップ教育学会発行の『シティズンシップ教育研究』第4号に投稿予定である。