表題番号:2023C-568 日付:2025/04/14
研究課題高校生の性格特性の変化に関する一研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 斎藤 翔一郎
研究成果概要
 若者の性格特性に関する研究は数多く行われている。たとえば、大学生の性格特性の変化について1986年・2002年・2018年の3時点においてYG性格検査により検討した研究(中村・相良, 2020)、16歳から29歳の青年を対象に1992年・2002年・2012年の10年ごとの変化を調査した研究(藤村・浅野・羽渕, 2016)、さらには情緒不安定性に焦点を当てた時間横断的メタ分析(小塩・市村・汀・三枝, 2020)などが存在する。しかし、特定の高校における性格特性の経年的変化を検討した研究は極めて少ない。そこで本研究では、男子校であるA高校において1970年代に実施されたYG性格検査の結果と、2023年に筆者が同校で実施した最新の検査結果を比較し、性格特性の変容や継続性を検討した。1977年の同校研究紀要によれば、スクールカウンセラー導入の検討を目的として1974〜75年にYG性格検査が行われ、生徒全体の傾向としてはD型(安定積極型)の割合が最も高く、C型(安定消極型)の割合が最も低いと報告された。また、学業成績との関連ではC型が成績優秀である一方、E型(不安定積極型)およびD型は成績が振るわない傾向が示されていた。2023年の検査結果においてもD型が最多であり、次いでB型(不安定積極型)の割合が高かった。この結果は、A高校の男子生徒が活動性・攻撃性・支配性の側面で高い傾向を示しつつ、同時に劣等感や神経質傾向もやや高いことを反映していると考えられる。これらの傾向は約50年前とほぼ一致しており、同校に固有の気質が長期にわたって維持されている可能性を示唆する。現代においては個人情報保護の観点から成績との直接的な関連づけは困難であるものの、こうした長期的データの比較は、校風に即した進路指導や教育的支援の方針策定に有用な示唆を与えると考えられる。