表題番号:2023C-563 日付:2024/04/03
研究課題海洋資源の共同開発をめぐる国際法の展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 大学院アジア太平洋研究科 准教授 瀬田 真
研究成果概要

南部協定が2028年には終了する可能性があることから、日本及び韓国にとって、2028年後を見据えどのようにすべきかの研究を行った。南部協定は締結が1974年と50年前であることから、社会情勢、国際法の諸規則と、大きく変わっている。社会情勢としては、中国の大国化と脱石油・天然ガスの国際世論、という二点が両国の政策判断にとっては非常に重要となる。一部重複する海域を主張する中国への配慮をする必要があり、また、日本・韓国ともに先進国として脱化石燃料が期待される中、両国での石油・天然ガスの共同開発ということには新たな難しさがある。また、国際法規則、特に、境界画定の規則については南部協定が大きく依拠した北海大陸棚事件から、国際裁判所の判断基準は大きく変わっている。海底の地形、自然延長を重視した同事件の判決に対し、近年は、距離を重視する傾向にある。さらに、ニカラグア=コロンビアの200海里以遠の大陸棚の境界画定事件において、20237月にICJは、慣習国際法上、ある国家の大陸棚の権原は基線から200海里を越えて、他の国家の200海里以内には伸長しない、との判決を下した。慣習法の認定プロセスを中心にこの判決には批判も多いが、これが確立していくとなれば、南部協定の設定した共同開発区域の一部について、韓国は権原を有さなくなる。その場合には、既存の制度の維持が国際法の流れからずれることとなり、韓国はもちろん、日本にとっても悩ましい問題と言える。これらの問題については、済州島でシンポジウムが開催された際に韓国の専門家とも意見交換を行い、現在、論文を鋭意執筆中である。