表題番号:2023C-557
日付:2024/04/02
研究課題非整数ブラウン運動の駆動する確率微分方程式に関する漸近統計理論
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 国際学術院 国際教養学部 | 助教 | 中島 翔平 |
- 研究成果概要
本研究の目的は, 連続時間型の確率過程である, 非整数ブラウン運動の駆動する非線形確率微分方程式の解に対して, 最尤法を用いた推定量を構成しその一致性と漸近正規性, さらに推定量が真値にモーメント収束することといった統計的諸性質を明らかにすることである. 特に今年度は小さいハースト指数を持つ, 非整数ブラウン運動が乗法的ノイズとして駆動する多次元確率微分方程式の漸近的統計推測理論に関する研究を行った. ただし, 観測時刻は固定し, 得られているデータは連続的であるとする.
非整数ブラウン運動が駆動する確率微分方程式の統計推測においては, 方程式の解をセミマルチンゲールへ変換し, 得られたセミマルチンゲールにギルサノフの定理を用いることで, 尤度関数を得る手法が知られている. しかし, 小さいハースト指数を持つ, 非整数ブラウン運動が乗法的ノイズとして駆動する多次元確率微分方程式に同様の手法を適用しようとすると, 変換したセミマルチンゲールに観測可能量ではない非整数ブラウン運動の重複積分が現れてしまい, 推定量として意味をなさなくなってしまう. これは確率積分をラフパスの意味で解釈したことで生じる障壁だが, 伊藤型の公式を用いることで重複積分を用いることなく観測データのみを使って, あるセミマルチンゲールを表現できる. このセミマルチンゲールに対して, ギルサノフの定理を用いることで最尤型推定量を構成した.