表題番号:2023C-550 日付:2024/03/11
研究課題マクロン政権の対アフリカ政策(2017-2023)の検証
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 国際教養学部 教授 片岡 貞治
研究成果概要

フランスの対アフリカ政策が、今、大いに揺れている。サヘル地域の3カ国、マリ、ブルキナファソ、ニジェールでは、クーデター後に成立した暫定軍事政権は、「フランスに『Non』」を突きつけている。国民レベルでは、この反フランス感情は、明らかに誇張されたものであるが、特に教育水準が崩壊している状況では、若者の間では間違いなく、この反フランスの感情は存在する。

フランスの影響力の拒絶は、西アフリカの住民の間で徐々に定着し、かつての植民者を、この地域のすべての悪の元凶にするまでに至った。このスローガンは、ガボンの、フランスびいきの首都であるリーブルヴィルでも、ファッショナブルなものになっている。「フランス人よ、家に帰れ!」、このスローガンは202394日に発表された。

ガボンの新しい有力者であるブライス・クロテール・オリギ・ンゲマ(Brice Clotaire Oligui Nguema)将軍が、「国家機関移行再建委員会」の委員長に2023831日に就任した。ガボン共和国防衛隊の司令官であるンゲマ将軍は、2023830日に、2009年のオマル・ボンゴ・オンディンバ(El Hadj Omar Bongo Ondimba)大統領の死後、権力の継承者である息子の国家元首のアリ・ボンゴ・オンディンバ(Ali Bongo Ondimba)大統領を退陣させていた。実際、ンゲマ将軍は、56年間続いた一族の権力に終止符を打ち、フランスとの長年の関係にも、一旦はけりをつけた。

リーブルヴィルでは、アフリカの他の場所、バマコ、ワガドゥグ、ニアメで沸き上がっているこの反フランス感情を利用している政党はない。クーデターへの非難は、あまり多くを語らずに、憲法秩序への復帰を求めており、移行の期間や内容に関する助言はない。何よりも波がないのである。ここでは、2009年に「家長」で独裁者のオマール・ボンゴ大統領の「治世」が終わって以来、憎しみを爆発させることなく、フランスへの期待が徐々にしぼんでいっている。

特に、アフリカの紛争問題、紛争解決・紛争予防が世界的な課題として取り扱われている今日、アフリカ大陸において、欧米諸国の中で緊密な軍事的なプレゼンスを誇り、旧植民地であったフランス語圏アフリカ諸国等との特殊な関係を維持し、アフリカに対して特殊なアプローチを行ってきたフランスの対アフリカ政策とその変遷に焦点を当てつつ、現状と展望を描くことを本稿の目的とする。