表題番号:2023C-541 日付:2024/04/01
研究課題習慣的な太極拳運動が中高齢者のストレス耐性とマインドフルネス能力に及ばす影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 准教授 谷澤 薫平
研究成果概要

目的:本研究は、太極拳は他の有酸素運動よりもストレス耐性および回復力の向上に有効という仮説のもと、習慣的な太極拳運動が高齢者のストレス耐性および回復力に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行った。

 

方法:本研究の研究デザインは、習慣的な太極拳実施者と習慣的なウォーキング実施者を比較する横断研究とした。対象者は、習慣的に太極拳を行っている高齢者(太極拳群)12名と、習慣的にウォーキングを行って高齢者(ウォーキング群)14名であった。ストレス耐性を評価するため、急性の心理社会的ストレス課題の一つであるTrier Social Stress Test (TSST)を行った。TSST5分間のスピーチ課題と5分間の暗算課題から構成され、TSST実施前の安静時、スピーチ課題直後、暗算課題直後、TSST終了5分、15分、30分、45分および60分後の計8回唾液を採取した。生理的ストレス反応の指標として、唾液中のコルチゾール濃度をELISA法により分析し、その変化を太極拳群とウォーキング群で比較した。

 

結果:時間と群を要因とした二元配置分散分析の結果、唾液中のコルチゾール濃度に対する有意な時間の主効果が認められ(P<0.001)、TSST終了5分後のコルチゾール濃度はその他全てのタイムポイントと比較して有意に高かった(全てP<0.05)。また、時間と群の間に有意な交互作用が認められた(P=0.008)。単純主効果の検定を行った結果、TSST終了30分、45分および60分後において、ウォーキング群と比較して太極拳群は有意に高いコルチゾール濃度を示した(全てP<0.05)。

 

結論:太極拳群よりもウォーキング群の方がTSST終了後のコルチゾール低下率が大きかったことから、仮説に反し、ストレスに対する回復力は、習慣的な太極拳運動実施者よりも習慣的なウォーキング実施者の方が高い可能性が示唆された。