表題番号:2023C-536 日付:2024/03/28
研究課題女性中堅社員を対象とした経験学習と価値観・信念の質的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 廣松 ちあき
研究成果概要

中堅社員の育成施策は,Off-J T(Off the Job Training :職場を離れた訓練)が中心となる新人や管理職層と比較して,人事異動やOJT (On the Job Training :職場内訓練)などの現場実践に依存している.中堅社員は,職場の中核的な存在として,組織業績の達成に貢献するとともに,実際の業務を通じて職務遂行能力を高めることが期待されている.さらに, 通常の定型業務を安定的に運営できることに加えて,中堅社員としてのレベルに応じた非定型業務に取り組む能力をもった「創造的熟達者」となることが求められている.中堅社員の創造的熟達者への移行には経験学習による実践知の向上が重要である.特に女性中堅社員は,中堅社員の時期に結婚・出産・介護などのライフイベントが重なることが多く,仕事経験だけではなく私生活の様々な出来事がその経験学習に影響を及ぼしていると考えられる.本研究の目的は,民間企業に勤務する女性中堅社員の経験学習の実態について明らかにし,経験学習を促進する内省支援の方法を検討することである.従業員規模300人以上の大企業に勤務した経験をもつ,社会人歴5-15年程度の正社員女性中堅社員25名を対象として,2022年10月-2023年3月に半構造化インタビューを行った.2023年4月-2024年3月には,これらの対象者のうち,出産・育児に関わる休職を経て休職前と同じ企業に復職した12名を取り上げて,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた「育児休職後も同じ企業で働き続ける子育て中の女性中堅社員」の「仕事経験と私生活経験からの学びのプロセス」を分析中である.これにより,育児中の女性中堅社員の仕事と私生活における経験からの学びと,その促進要因・阻害要因を把握する.今後は,さらに女性中堅社員の経験学習と内省の特徴および,経験学習に影響を与える信念・価値観の形成プロセスを明らかにする.