表題番号:2023C-532 日付:2024/09/19
研究課題視覚情報の影響を受ける味覚の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 杉森 絵里子
研究成果概要

先行研究において,容器の色によって同じ味であるはずのコーヒーの味評価が異なることが明らかになっている (Carvalho, & Spence, 2019)。また,苦味の強いお茶やチョコレートは,苦みの弱いそれらと比較して,見た目が「苦い」とより苦みを感じ,見た目が「甘い」とより甘みを感じることが申請者によって明らかにされている。このことから,味評価において視覚の影響の受けやすさが元々の味によって異なることが示唆される。しかし,味の薄さに焦点を当てた研究は存在しない。薄味のときと,濃い味のときで,味覚評価における視覚の影響の受け方が異なることを確かめるため,実験を行った。ショ糖(1%,3%,5%)×カフェイン(0.02% 0.05%  0.08%)の9種類に甘味と苦味の濃さを調整し,透明・ピンク・茶色の3種類の容器に入れた。63名の大学生を対象に,全27種類について,その甘味と苦味の評定を行ったところ,より甘味が薄く,苦みが濃い際(ショ糖1%,カフェイン0.08%)に,容器の色の影響を受けやすく,ピンクの容器の時にはより「甘く」,茶色の容器の時にはより「苦く」感じることが明らかになった。つまり,甘味が薄く,苦みが濃い時に,クロスモーダル知覚が起こりやすいことがうかがえる。この研究成果をまとめるとともに,今後,味覚が他者への印象や,物語への印象に及ぼす影響についても,同様の結果がみられることを確認する。