表題番号:2023C-529 日付:2024/03/30
研究課題高心配性者の認知情報処理がパフォーマンスと生活支障に与える影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 助手 町田 規憲
(連携研究者) 早稲田大学人間科学学術院 教授 田山淳
研究成果概要
 過剰な不安・心配に伴って臨床的に意味のある苦痛と生活支障を経験する難治性精神疾患として,全般不安症がある。この生活支障は社会機能が障害された状態として概念化されている。全般不安症のアナログ状態像である「高心配性者」は,医学的診断を得ていないものの,臨床症状と社会機能障害の双方で全般不安症と量的連続性がある。全般不安症では不適応的な情報処理であるCognitive Attentional Syndrome(CAS)が中核として想定されてきたが,近年,注意制御の個人差がCASと独立して社会機能障害に影響することが示されている。注意制御は測定法によって異なる側面を反映しており,日常生活場面における注意(注意方略)の重要性が示唆されている。この概念的特徴を捉える上で,既存の手法に加えて,日常生活の特定の文脈における情報処理を測定し,検討することが有用である。従って本研究では,高心配性者を対象に,社会機能に影響する情報処理プロセスを検討した。
 研究準備として,日常の情報処理を測定するEcological Momentary Assessment(EMA)を用いた指標の説明,教示,項目プールを作成した。続いて,高心配性者に該当する45名を対象に,認知課題の測定と,EMA測定を実施した。その結果,まずEMA指標について許容可能な妥当性が確認された。続いて,仮説モデルの検討を実施した結果,CASと注意方略が独立して社会機能を予測した。また,注意方略を有意に予測する変数は認められなかった一方で,CASはメタ認知的信念と注意制御機能によって予測された。以上のことから,全般不安症の社会機能を改善する上では,メタ認知的信念と注意制御機能の操作によるCASの減弱と,注意方略の操作が有用である可能性が示された。
 以上をふまえて,各変数を操作した場合の社会機能障害への影響,および作用機序の検討が必要であり,それに向けた予備実験が完了している。今後は,実験操作した場合のデータ収集を継続し,全般不安症の社会機能障害の改善のための知見の蓄積を目指す。それに向けた準備として、今年度は、参加者データを取り込み保管するスキャナーとNASストレージ、解析用モニター、参加者に配布する資料に使用するプリンターのインクトナーと印刷用紙に研究費を使用した。