表題番号:2023C-527 日付:2024/04/01
研究課題高齢者介護施設における介護ロボットの導入と活用の現状と課題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 講師 内田 和宏
研究成果概要
生産年齢人口が減少する我が国において,介護人材不足を補うための施策として,介護現場におけるICTや介護ロボット等の活用が求められている.しかし,2021年2月に介護労働安定センターが実施した調査では,「現時点で情報通信技術(ICT)は導入していない」と回答する事業所が約半数であった.また,新型コロナウイルス感染症禍でのICT機器を活用した業務について,「ICTによる介護実施記録の作成」が36.3%,「ICTによる人で不足の解消」が22.9%となっており,「介護ロボットの導入によるケアの代用」にいたっては,16.4%となっていた.このように,ICTや介護ロボット等の活用は求められているが,なかなか導入が進んでいない状況にある.そこで,本研究では,高齢者介護施設におけるICTや介護ロボット等の活用の現状と課題を探索的に明らかにすることを目的にヒアリング調査を行った.ヒアリング調査を行った結果,ICTや介護ロボット等は,まず,現場の問題を明らかにしたうえで導入することが必要であることがあげられた.また,ICTや介護ロボット等が現場の問題を解決してくれるわけではなく,それらを適切に活用するためには,取り扱う介護職の力量が必要であることがあげられた.また,人間と機械の協働を推進していくためには,適切なマネジメントが必要であることがあげられた.適切なマネジメントとして,課題の分析,導入の計画,教育研修,導入の評価,といったプロセスが必要であることがあげられた.また,ICTや介護ロボット等を新しく導入する際においては,介護オペレーションの組み換えなどで,一時的に介護の質や効率が低下することがあげられた.こういった生産性や介護の質の低下は短期的なものではあるが,小規模事業所においては,日々の業務の傍ら導入のマネジメントを行う必要があるため,負担が大きく,導入が進まないといった実態も明らかになった.