表題番号:2023C-522 日付:2024/03/18
研究課題生命の起源に関わる古代タンパク質の復元と機能解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 講師 八木 創太
研究成果概要

これまで、セントラルドグマに関わる古代βバレルタンパク質四種(DPBBRIFTOBSH3)が共通の祖先タンパク質から進化してきた姉妹タンパク質であることを実験的に証明してきた。2023年度は、これらのβバレルタンパク質に機能があるかを検証した。DPBBDNA結合能を持つことをこれまでに明らかにしていたため、他3種の再構成したタンパク質のDNAとの相互作用を解析した。その結果、RIFT構造を持つタンパク質では非常に強いDNA結合能力を確認することができた。また、OB構造を持つ一部の変異体も弱いDNA結合能力が認められた。つまり、これらの古代βバレル構造は核酸ポリマーとの結合能力を保持しながら、分岐進化してきた可能性がある。

さらに、本研究では上記4種とは異なるβバレル構造との進化的関係性を検証し、古代タンパク質進化ネットワークの更なる解明にも取り組んだ。これまでに作成したSH3構造タンパク質は、代謝系酵素に保存される金属結合タンパク質ルブレドキシンとの類似性が確認できた。そこで、SH3―ルブレドキシン間の進化的関係性の検証を試みた。ルブレドキシンは2箇所の類似した金属結合配列モチーフにより、亜鉛などの金属イオンと結合する。この金属結合配列モチーフをSH3タンパク質に移植し、複数の変異体を作成したところ、一部の変異体は赤色を呈し、鉄原子との結合が示唆された。また、他の変異体のX線結晶構造解析の結果、ルブレドキシンと同様に亜鉛原子と結合したβバレル構造を持つことがわかった。つまり、SH3とルブレドキシンも少ない遺伝子変異で変換可能な姉妹タンパク質群であることが分かった。加えて、ルブレドキシンの金属結合配列モチーフを含む13残基のペプチドを合成し、X線結晶構造解析を行ったところ、ペプチドが二量体となってルブレドキシン様の構造を持つことが分かった。この結果は、13残基の短いペプチドが遺伝子重複と融合の結果ルブレドキシンに進化したことを強く示唆する。