表題番号:2023C-520 日付:2024/02/05
研究課題ドイツ文学におけるメデイア伝説改作・翻案の系譜
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 講師 牧野 広樹
研究成果概要

本研究課題では、、1) フランツ・グリルパルツァー『金羊毛皮』(1822年)の読解と解釈2) ドイツ語圏文学における主要なメデイア伝説改作・翻案の把握、3) メデイア伝説に関わる問題圏の検討の三点を主要な方向性として定め研究を推敲した。

 1) では、ドイツ語圏文学におけるメデイア改作の戯曲として最も有名と言ってよいグリルパルツァーの『金羊毛皮』の読解と解釈を行った。本作品では、他の作品にはない長い前日譚をも扱った、当時では珍しく三一致の法則を破って作られた長編戯曲という点に着目し、メデイアとその夫ヤーゾン、そしてヤーゾンの不倫相手でコリント王の娘クレウーサのコミュニケーションの様相、および関係性の変容を考察した。

2)では、グリルパルツァーの上記作品のほか、ハイナー・ミュラーの『落魄の岸辺、メデイアマテリアル、アルゴー船隊員たちのいる風景』(1982年)を中心に、メデイア伝説改作・翻案作品を収集、整理した。

3)では、メデイア伝説のうち、「家族」や「子殺し」等、物語内において多くの作品に共通して見られる要素について、様々な視点から考察するための基礎的な問題圏について調査し、文献の購入および読解と解釈を行った。

そのうち、1)についての研究成果を、論文「邂逅するメデイア : グリルパルツァー『金羊毛皮』における「他者」との遭遇」を『世界文学』第138号に投稿、査読の上掲載された。