研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 樋口 直人 |
- 研究成果概要
本研究は、科学研究費補助金(基盤研究(B))「何が移民の職業移動を妨げるのか:日伊のペルー移民をめぐる構造・集団・主体的条件」を補完し、調査の回数を増やして得られるデータの質量を高めることを目的としている。そのため、経費を用いて2024年2月にイタリア・ミラノ市に出張し、42人のペルー移民に聞き取りを行った。科研費と併せたプロジェクト全体では、850人の移民に対して聞き取りしている。そこで明らかになったのは以下の通り。
在伊ペルー移民は、イタリアに居住する移民全体の中でも職業的地位が低く、介護(女性)と運輸(男性)がニッチとされてきた。階層的地位の低さは、大多数が非正規移民として入国すること、出身国での階層の低さで一定程度説明できる。発展途上国の貧困層は国際移民するだけの資源を調達するのが困難と言われるが、路上販売、私バス車掌、清掃員といった職につくリマの都市下層労働者が、イタリアに来ていた。ペルーにおいて中等教育未満の学歴、最低賃金未満の収入の移民が、予想外に多かった。
ペルー移民がイタリアでつくのは、清掃、介護、建設といった仕事が多いが、都市下層にとっては職業的地位が低下せず、喪失が少ない分だけ移住のメリットは大きくなる。在留資格がないと職探しは困難だが、貧困層向け住居、NGOによる食事や食料・衣料品の提供で、月収400ユーロ程度でも生きていける。こうした移民向けのインフラとイタリアの地下経済の大きさが相まって、リマからイタリアへの移住が現実的な選択肢となる。リマの都市下層は、より階層の高い同胞と比べてイタリアでの社会移動が困難だが、移民による利得はむしろ中間層より高いともいえる。
こうした知見を速報的にまとめた内容を、2024年6月に開催される関東社会学会で報告する予定である。