表題番号:2023C-518 日付:2024/03/31
研究課題海鳥巣内のプラスチックゴミが巣内環境変化を通じて孵化率におよぼす影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 准教授 風間 健太郎
研究成果概要
 現在、流出したプラスチックによる海洋生態系の汚染が深刻化している。プラスチックが巣材として利用されることで、巣内の湿度や温度が変化することが明らかとなっているが、そうした変化が孵化成功率やヒナの成長・生残におよぼす影響は不明である。
 本研究では、北海道利尻島で繁殖する海鳥2種(ウミネコ、オオセグロカモメ)の巣内のプラスチックが抱卵中の巣内環境の変化を通じて孵化率におよぼす影響を解明した。2023年6~8月に北海道利尻島において、2種の海鳥繁殖地で踏査により巣材中のプラスチックの種類、個数、重量を測定した。プラスチックを含む巣に温度ロガーを設置し、プラスチック取り込みによる巣内温度と湿度の変化を測定すると同時に各巣の孵化状況をモニタリングし、プラスチック巣材が孵化成功率におよぼす影響を調べた。
 プラスチックを含む巣ではそうでない巣に比べて、親鳥が継続して抱卵している場合には抱卵温度の低下は見られなかったが、親鳥が抱卵を中断して巣を離れた際の卵温度の低下速度が大きかった。またその傾向は外気温が低い時ほど顕著であった。巣へのプラスチックの混入は、巣の断熱性や保温性を低下させることが示唆された。
 一方、プラスチックを含む巣の孵化率は、含まない巣に比べて低下するわけではなかった。これは、今回の研究条件下では巣に含まれるプラスチックの量が少なく、巣の断熱性や保温性の低下がそれほど顕著でなかったためと考えられた。今後、環境中のプラスチック量が増加し、巣への混入量も増加した際にはより深刻な影響が顕在化する可能性がある。