表題番号:2023C-512 日付:2024/04/07
研究課題国際ビジネスとサステナビリティ
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 長谷川 信次
研究成果概要

本研究の目的は、新型コロナパンデミックや世界各地での地政学リスクの増大、あるいはサステナビリティへの志向の高まりから、脱グローバル化あるいはスローバリデーションが叫ばれる時代にあって、多国籍企業の持続可能でレジリエントなビジネスモデルを明らかにすることにあった。その研究の一環として、ローカルSDGsとグローバルSDGsの架橋モデルの構築を目指した。本年度は、とりわけ環境サステナビリティに焦点をあて、ローカルとグローバルのベストミックスを探るべく、欧州における日系企業の地域本社へのインタビュー調査、フランス・ブルゴーニュ地方のワイン・テロワールの実地調査、パリ・サクレ大学経営研究所、およびパリ・パンテオン・ソルボンヌ大学の研究者らとの意見交換等を行った。これら調査研究の結果、経済活動の「動脈系」を3R(Reduce、Reuse、Recycle)の実践を通じて資源投入・消費を低減させることで「静脈系」と結びつけることで、ストックの有効活用を目指してきた従来型のサーキュラーエコノミーだけでは経済性を担保することが困難であることを明らかにした。同時に、サーキュラーエコノミーの経済性を高めるためには、価値連鎖の上流と下流でグローバル経済と接続させることが鍵を握ること、そこに多国籍企業のあらたな役割を定義する必要性を説き、国際学会において報告した。本研究課題は次年度以降も継続し、地場企業や行政、非政府組織、地域コーディネーターなど、ローカルなサーキュラーエコノミーを構成するさまざまなステークホルダーとの相互作用のなかで多国籍企業の役割を再定義し、それらをサステナビリティ向上に向けて統合的に導くレジームの本質を明らかにしながら、そのなかに多国籍企業を明示的に組み込んだモデルを記述する。その成果は2024年度中に国際シンポジウムや学術雑誌での論文発表で公開する予定である。