表題番号:2023C-501 日付:2024/03/07
研究課題フィールド情報学に基づいた商店街のソーシャルキャピタル醸成の検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 講師 家入 祐也
研究成果概要
 日本には現在,10,000を超える商店街が存在している.令和3年度の中小企業庁の調査では,商店街が抱える課題は多岐にわたるものの,商店街内の空き店舗の存在が大きな問題のひとつとして挙げられている.このような歯抜け状態の商店街は,地域コミュニティとしての一体感の喪失につながり,商店街の衰退を加速させる.本研究の目的は,このような地域商店街のソーシャルキャピタルがどのように醸成されるかを,フィールド情報学に基づいて明らかにすることである.本研究ではとくに,地域で活躍する人と店舗の間のつながりに着目する.このようなつながりが広がり,強固になることで,地域商店街のソーシャルキャピタルは醸成されていくと考えられる.
 本研究では,人と店舗の間のつながりが,どのようにして広がり強くなっていくかを調査するために,10名の実験参加者に対して,全3回(1週間に1回),次のような実験を行った.実験では,実験参加者間で早稲田エリアに位置する66店舗に関する情報の交換を行った.そして,この情報交換の前後では,他の参加者との間のつながりや,早稲田エリアに位置する66店舗への印象や訪問度合い,などがアンケートによって調査された.本実験では,アンケート調査の結果のほかに,情報交換中の会話データを収集した.実験結果の分析によって,参加者間の情報交換を経て参加者間の内面的関係性や外面的関係性の変化が異なることや,情報交換の内容によって参加者間のつながりの変化具合も異なりうることが分かった.さらに,人から店舗への印象や訪問度合いも,参加者間の情報交換を経て変化しうることが確認された.今後,情報交換で行われた会話の内容と,人から店舗への印象や訪問度合いの変化を対応させることで,どのような人と人の間のインタラクションが,人から店舗への印象や訪問度合いを変化させうるか,地域商店街のソーシャルキャピタルを醸成しうるか,を明らかにしていくことが期待される.