表題番号:2023C-493 日付:2024/03/29
研究課題4D-MRIを用いた大動脈解離モデルの偽腔内血流評価に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院先進理工学研究科 准教授 服部 薫
研究成果概要

重篤な合併症を伴わない Stanford B 大動脈解離の標準的治療は保存的降圧療法であるが,25% の症例では慢性期に偽腔の拡大が進行し,時として大動脈破裂で死亡する.このような高リスク症例には,偽腔拡大が顕在化する前にステントグラフトでエントリーを閉鎖する先制的ステントグラフト治療が推奨されている.しかし、現時点では慢性期の偽腔拡大を予測する上で必要十分な臨床的指標がなく,高リスク型の予測診断および至適時期での先制的ステントグラフト治療は困難な状況にある.本研究では,高リスク型B型大動脈解離の解剖学的特徴を明らかにするため, 弓部大動脈の走行の「捻れ」 下行大動脈の 「屈曲」をパラメータとするB型大動脈解離の病態シミュレータを開発し,これらのパラメータが偽腔内流れに及ぼす影響を 4D-flow MRI で定量的に分析した.評価項目は,エントリー流入速度,エントリー流量,偽腔内流れの流速・循環,偽腔壁に作用する壁せん断応力とした.本年度は①弓部大動脈の走行の「捻れ」が異なる2種類のStanford B型大動脈解離モデルを作製し,大動脈解離患者の血行動態(心拍出量 5L/min, 平均大動脈圧 100mmHg, 左室収縮期圧 150 mmHg)を創出する拍動循環シミュレータを構築して,弓部大動脈の走行の「捻れ」が偽腔壁に作用する壁せん断応力の関連因子であることを明らかにした.

本研究成果は,第46回日本バイオレオロジー学会年会,第61回日本人工臓器学会大会で発表した.