表題番号:2023C-490 日付:2024/04/05
研究課題中国のソフト・ハード融合型開発協力:インド太平洋のTODとスマートシティを中心に
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 国際理工学センター(理工学術院) 教授 北野 尚宏
研究成果概要
本研究では、インド太平洋地域の都市・交通分野における、①中国の開発協力の全体像、②公共交通指向型開発(TOD)、スマートシティをはじめとする中国のソフト・ハード融合型開発協力の現状と課題を明らかにすることを目的としていた。①については、前年度課題「アジア・アフリカ途上国都市・交通分野における中国の経済協力の現状とリスク」で整備した中国輸出入銀行の譲許的融資である政府優遇借款及び優遇バイヤーズ・クレジットの融資データベースをさらに精査し(2000~2020年)、分析結果を共著論文として発刊した。途上国の債務問題深刻化を背景に、都市・交通分野においても巨額の債務を途上国に負わせて事業を推進することが難しくなっていること、需要が想定に達していない鉄道事業、歩行者の交通安全配慮が不十分な都市内道路など個別案件レベルでも様々な課題があることが明らかになった。②については、中国国内のTODの現状と課題を調査すると共に、事例として中国輸銀の融資で建設されたハノイ地下鉄2A号線を視察した。中国では、近年都市軌道交通事業者の資金調達や経営改善のために、都市開発地価上昇分を開発利益として公共還元するスキームとしてTODがブームとなっているが、需要を超える住宅建設など様々な問題に直面している。ハノイ地下鉄のケースでは、駅からの端末交通は整備されているが、TOD事業の形成はベトナム側の政策枠組みの未整備などにより進捗していないことが確認できた。成果は公開セミナーで発表した。スマートシティについては、上述データベースをもとに、ファーウェイなど中国通信機器メーカーが近年アフリカなどの途上国で、データセンター建設事業、国内の全都市を光ファイバーネットワークで結び中国企業が提供するスマートシティプラットフォームに接続する事業などを展開していることを確認した。