表題番号:2023C-484 日付:2024/02/08
研究課題ゼブラフィッシュ神経損傷回復におけるミドカインの役割の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 大島 登志男
研究成果概要

ミドカインは組織修復時に発現が上昇することが知られている分泌因子であり、ゼブラフィッシュにおいても、心臓やヒレの再生時に発現し、これら組織の修復に寄与することが知られている。中枢神経系でも網膜の再生に寄与することが報告されたが、我々が解析してきた視神経や視蓋の損傷からの再生への寄与は検討されていない。視蓋損傷時に発現の変動する遺伝子群をRNA-seqで網羅的に解析した結果、ミドカイン遺伝子mdkaの発現が上昇していた。本研究では、mdka遺伝子発現について細胞レベルで解析するとともにその役割を機能喪失の系で検討する。実験では、抗ミドカイン抗体を用いて、各種細胞マーカーとの2重染色を視蓋損傷側と非損傷側で比較検討するとともに、mdka mutant fishにおける視蓋損傷や視神経損傷における回復を野生型と比較する。こうした実験を通じて、ミドカインの損傷修復時の役割について明らかにすることを目的とした。

 本研究では、視蓋損傷時において、損傷側で増殖するラジアルグリア(RG)にミドカインが発現するかを調べるため、RGGFPが発現しているGFAP:GFPトランスジェニックフィッシュをに対し、視蓋損傷を行ない、損傷側でRGの増殖がみとめられる損傷後2日目にミドカインの抗体染色を行なった。その結果、損傷側のRGでミドカインの染色が検出された。さらに、ミドカインの阻害剤であるiMDKを用いた阻害実験の結果、RGの増殖が抑制されることが分かった。これらの結果より、損傷を受けた視蓋ではRGがミドカインを分泌して、それがRGの増殖を促進している、オートクライン的な働きが考えられた。更に、mdka mutant fishZRICより入手したので、今後はmdka欠損ゼブラフィッシュを用いた実験を行なって行く予定である。