表題番号:2023C-477 日付:2025/01/14
研究課題魚類の多様な光応答現象の解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 岡野 俊行
研究成果概要

魚類の光応答現象を探るため、青色光受容タンパク質クリプトクロムの遺伝子を探索した。クリプトクロムはFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)を発色団とする青色光受容タンパク質である。その結果、これまで解析されていないグループの遺伝子群を発見し、CRY6と命名した。ゼブラフィッシュのCry6の光応答性を調べた結果、眼球において、光依存的にmRNAが誘導されることが判明した。どのような光に応答するのかを調べるため、波長の異なる光に対する応答性を比較した結果、幅広い波長領域の光に応答することがわかった。クリプトクロムは一般に青色のみの受容に関与し、赤色領域の光受容には関与しない。一方、レチナールを発色団とするオプシン類には、赤~紫外までの幅広い領域に吸収極大が分布している。このことから、CRY6の光誘導には、複数種のオプシン類が関与していると推定された。CRY6のアミノ末端領域には、他のグループのクリプトクロムにみられない構造上の特徴が見出されたことから、この領域はCRY6特有の機能に関与していると推定される。具体的には、アミノ末端領域に、ユビキチン相互作用ドメインおよび核小体移行シグナルが見出された。これらの領域は、タンパク質のユビキチン化を介した分解あるいは機能修飾、ならびに、核小体への移動に関与すると考えられる。今後は、アミノ末端領域の組み換えタンパク質等をもちいた生化学的解析により、CRY6の生理機能を解析することが重要と考えられるである。