表題番号:2023C-468 日付:2024/04/05
研究課題Mg ナノ粒子を用いた触媒添加 Mg 水素吸蔵材料の簡易合成プロセスの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 講師 花田 信子
(連携研究者) 先進理工学部 学部4年 森岡柚衣
研究成果概要

 水素貯蔵材料の中でマグネシウムは、マグネシウム水素化物(MgH2)を形成して7.6 mass%109 kgH2/m3と高容量の水素を吸蔵する。水素吸蔵放出の反応速度が遅いことが欠点であったが、これまでにMgH2に金属酸化物であるNb2O5をボールミリング法によりナノレベルで高分散させることで、反応速度の向上に成功した。これを水素貯蔵タンクに搭載する場合にはkgオーダーで大量に合成する必要がある。ボールミリング法はスケールアップには向いておらず、触媒添加Mgの新たな合成プロセス開発が必要となる。本研究ではMgを出発材料として、Mgナノ粒子を連続的に合成し、触媒を担持するビルドアッププロセスによる触媒添加Mgの合成を目的とする。Mgナノ粒子を連続的に作製する方法として不活性ガスフローによる熱プラズマ法を用いる。作製したMgナノ粒子の表面に少量の触媒を一様に添加するために、蒸気圧の低いNb塩化物を用いて昇温によりMgナノ粒子表面に蒸着させ、水素吸蔵放出特性を評価した。

まず熱プラズマ法を用いて、Mgを電極としてアーク放電により蒸発させ、同時にArガスを流すことによりMg粒子を作製した。Mg粒子は作製できたが、0.1-0.5μm程度の粒径でのばらつきが見られ、水素吸蔵量も2mass%程度と低かった。そこで、アーク放電時のラインに整流管を設置して、粒子の流れを改善した。その結果、0.1-0.2μm程度の一様な小さい粒子を作製でき、水素吸蔵量も4mass%程度まで増加した。次に、このMg粒子に触媒源としてNbCl5を蒸着させた。しかし、Mgナノ粒子の水素吸蔵量が2mass%に減少し、水素吸蔵速度も改善しなかった。NbCl5が表面でMgに還元されて、Nbが触媒効果を示す効果を期待していたが、Mg粒子表面のMgO上にNbCl5がそのまま蒸着されたため、むしろ水素吸蔵放出特性を阻害したことが分かった。今後は、触媒効果を示すNb単体もしくは価数の低いNb酸化物などをMg粒子表面に添加する方法を検討する。