表題番号:2023C-463 日付:2024/04/03
研究課題シリコン表面上の二酸化炭素の吸着および水素化における実験的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 国吉 ニルソン
(連携研究者) 地球環境資源工学専攻 修士2年 幸田怜
(連携研究者) 地球環境資源工学専攻 教授 山口勉功
研究成果概要

本研究では,シリコンウエーハの製造過程で発生するシリコン廃棄物(以降,シリコンダストと呼ぶ)に注目し,その表面上で二酸化炭素の吸着や水素化反応が進行するかを実験的に確かめることを目的としている.シリコンウエーハの製造過程に,単結晶シリコンをダイヤモンドワイヤー等によってカットされる行程があり,シリコンダストはそのときに発生する.このことから,シリコンダスト粒子の表面はSi(100)などの結晶面を含むと考えた.また,スラッジの形状になるシリコンダストは,水や空気にさらされ,粒子の表面は酸化された状態であると想定した.酸化されたSi(100)面をシリコン原子からなるクラスターを用いてモデル化して,量子化学計算を行った.その結果,条件によっては二酸化炭素の吸着反応および水素化反応が進行する可能性はあるとの結果を得た.実験ではまず,企業から提供されたシリコンスラッジを乾燥機にて200℃下で乾燥させ,ブレンダーによって粉末にした.電気炉の中心に粉末になったシリコンダストを設置し,炉内温度を100℃に設定して,二酸化炭素と窒素の混合気を流した.二酸化炭素を流す前後,シリコンダスト粉末の成分をSEM-EDSにて測定した結果,実験後に酸素原子の割合は上昇し,シリコン原子の割合が減少したことがわかった(装置の特徴から,炭素原子の割合を測定できなかった).この結果は二酸化炭素が吸着されたことを示唆しているが,赤外線吸収スペクトルの測定から,二酸化炭素分子と粒子表面との間に化学結合を確認できず,分子が粒子間にトラップされているだけの可能性は考えられる.あるいは,一旦吸着された分子が脱着した可能性もある.今後,安全を確保した上で水素ガスもシリコンダスト上に流す実験を行う.二酸化炭素と水素からなる混合気の成分や電気炉内の温度などをパラメータとしてデータを収集する.