表題番号:2023C-461 日付:2024/03/01
研究課題溶融凝固現象と毛細管現象を用いて自己修復する金属材料の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 助教 三宅 章太
研究成果概要
本研究では、溶融凝固現象と毛細管現象を利用した金属の自己修復材料の開発を実施した。溶融凝固現象を用いた自己修復は金属に適応でき、複数回の強度回復を可能とする一方で、溶融時に金属が外部に流出してしまい自己修復性能が低下するという課題が知られている。そこで、毛細管現象を用いることで溶融した金属の流出を防止し、高い強度回復率を持ちつつ複数回の自己修復を可能とする材料を提案した。具体的な研究として、本年度は毛細管現象を発生させる金属材料と構造の調査と自己修復材料の簡易的な評価を実施した。毛細管現象に適した金属材料と構造の調査では、複数種類の低融点金属を金属構造に浸透させることで、どのような挙動を示すかを調べた。その結果、一般的に知られている銅とハンダの組み合わせ以外でも、低融点金属が金属構造に浸透することが判明した。また、金属構造の違いによって、溶融した低融点金属の振る舞いが変化することや、自己修復後の様子に差異が発生することも明らかにした。加えて、自己修復前と後を観察すると、材料に発生したクラックが自己修復によって消失することを確認した。一方で、自己修復材料の評価では製作した材料に曲げ試験を実施して性能評価を行った。本研究では複数回の自己修復を提案しているため、試験では0から4回の自己修復を実施した材料を4つずつ準備し、それぞれ最大曲げ強度を調査した。その結果、4回の自己修復後も強度の低下は見られないことを実験的に示した。これらの成果はそれぞれ、国内学会MRS年次大会と国際学会MRM2024にて発表を行った。今後の展望としては、本年度は実施しなかったGa系の低融点金属を用いた自己修復材料の製作を行う。また、曲げ試験法が3点曲げであったため、4点とすることでより安定した材料評価を実施することで、材料の自己修復性能の評価をより詳細に実施する。