表題番号:2023C-460 日付:2024/03/24
研究課題ターボチャージャーの軸周りで発生するエネルギー損失モデルの構築
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 准教授 上道 茜
研究成果概要
自動車パワートレインにおいてターボチャージャー(以下、ターボ)はエネルギー有効利用を図ることができ、カーボンニュートラルに寄与する。ターボの軸周りでは、エネルギー損失が発生するが、従来の制御モデルにはマップが用いられており、機械損失と熱損失が分離されていない。しかしながら、精緻なエネルギーマネジメントのためには物理に基づいた数理モデルが不可欠である。本研究グループでは、これまでに軸受部で発生する機械損失予測モデルを構築してきた。本研究課題では、このモデルを汎用性のあるものに発展させることを目的として取り組んだ。まず、集中熱容量モデルを用いて熱損失の予測モデルを構築した。集中熱容量モデルとは、電気回路のアナロジーを用いて熱の移動を表現できるモデルである。準断熱条件を仮定し、軸方向のみを考慮した。ターボのハウジングにおいては自然対流による熱伝達による熱損失が生じると仮定し、3Dスキャナを用いて表面形状を計測し、CFDシミュレーションによって熱伝達率を導出し、モデルに組み込んだ。モデルの評価には、定常状態におけるターボハウジング表面の温度をモデルから得た値と実験による値を比較した。実験では、サーモグラフィーを用いて表面温度を計測した。その結果、モデルによる予測は、実験で得られる軸回転が増加するにつれ、表面温度が上昇する傾向が再現できた。ただし、今回の結果によれば軸回転数が30,000 rpm以下の場合、準断熱条件が満たされないため、モデルの適用範囲外であることが明らかとなった。軸回転数30,000 rpm以上で比較したモデルから予測された値と実験から得た値の差は,ブロワの吐出空気温度上昇によって説明できると考えられる。次に、複数メーカのターボを分解し、軸周辺部品の寸法や形状に即してターボ軸周りで発生する機械損失予測モデルを構築した。今後、このモデルによる予測値を評価するため、実験を行い、モデルの妥当性を検証する。