表題番号:2023C-459 日付:2024/02/23
研究課題宇宙構造物の熱変形評価に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 教授 石村 康生
研究成果概要
 高精度な宇宙構造物の実現においては,熱変形の抑制が必須な課題の一つとなる.本研究は,この熱変形評価に関する研究を行った.
 まず,高精度CFRP製SARアンテナの熱変形評価を行った.アンテナ全体を恒温槽に入れて,フォトグラメトリによる形状計測を行い,熱変形解析結果との比較を行ったところ,試験時の変位を真とした場合の変位の誤差は20度温度低下の場合では10%,10度温度上昇の場合では17%であった.
また,同CFRP製SARアンテナパネルモデルについて,アンテナパネルの温度が-23度の場合とアンテナパネルの表裏温度差が1度とした場合の2ケースについて,解析を実施した.どちらの場合でも,Xバンドおけるアンテナ熱変形許容誤差を十分に満たしており,熱変形が抑制されていると考えられる.
 次に,機器インターフェースにおける熱変形の抑制について注目をし,観測機器と取付面の間に熱応力緩和機構を搭載することを検討した.熱応力緩和機構の役割は,観測機器を宇宙機に適切に固定し,観測機器に熱応力が伝わらないようにすることである.2枚の板間の熱応力緩和のために,上述のヒンジ構造を用いたバイポッド型の熱応力緩和機構を検討した.熱応力緩和機構の2自由度の並進剛性は,設計に用いる理論モデルと最終的なFEM解析モデルで求めたものを比較すると十分な精度で一致した.最後に,熱応力緩和機構の性能を,観測機器の取り付け面におけるバイメタル変形を対象として評価した.熱応力緩和機構を取付けた系と取付けていない系の変位を解析評価した結果,熱応力緩和機構を取付けていない系の変位に対して取付けた系の変位を1/10以下に抑制できることが示された.以上より,熱応力緩和機構の設計方法と適切な設計結果を示すことができたと考えらえる.