表題番号:2023C-450 日付:2024/04/03
研究課題日本の神社のオープンスペースに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 助手 泉川 時
研究成果概要

本研究では、日本に古くから残るオープンスペースや低未利用地として神社の境内に着目し、そこでどのような利用実態があるか明らかにする。それにより、今後存続の危ぶまれる神社の境内地のあり方を考察した。研究対象は①同じ生活・文化圏域にあり、比較分析しやすいこと、②広域に広がり神社形態の違いが望めること、③神社の規模に大きな偏りが出ないことの3つの条件をもとに、滋賀県神社庁に包括される琵琶湖圏域の神社を対象とした。調査の結果、まず社殿などの境内建物の配置は琵琶湖との距離によって変わる傾向が見られた。湖に近い場所では湖が見える方向に軸線を取る傾向にあり、そうした神社は従来の道路や地形に沿った配置ではないため、周囲との関係性よりも湖との関係が優先されているといえる。また、そのような湖への眺望を確保している神社の境内は、均等に配置されておらず、立地において各建物からの水景が最も見えやすい形に配置されていた。一方で、眺望が確保されていない神社は、きれいに配置されていることが多く、オープンスペースも広く確保されていた。境内オープンスペースの滞留者に着目すると、観光客が多く訪れる神社からあまり有名ではない小規模な神社まで、ほとんどの神社で滞留する人はおらず、ベンチ等がある場合にわずかな時間を過ごす程度であった。静的な地形とのつながりや景観への意識がみられる一方で、動的な人流等を感じにくい空間になっていることがわかる。ただしこれらは祭礼等のハレの日ではない、日常のオープンスペース利用の断片に過ぎないため、今後はハレの日との違いにも留意しながら、オープンスペースの活用方法を検討する必要があるといえる。