表題番号:2023C-444 日付:2024/04/05
研究課題イスラム文化圏都市の住宅建築にみる窓・開口部に関する基礎的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 創造理工学部 助手 池田 理哲
研究成果概要

本研究では、現在のイスラム文化圏の都市(以下、イスラム都市)の住宅建築を対象として、特に窓・開口部に着目して建物内外の可視性に関わる空間・周辺環境・遮光性等を分析することで、現代の日本の住宅を始めとした建築にも通ずる新たな窓・開口部及び周辺空間の〈かた〉を築くための一助を得ることを目的とした。イスラム都市の様々な街並みをみると、建築と周囲環境や都市との関係性は街ごとに大きく異なっており、本年度はヨルダン・アッサルトとUAE・アルラスハイムを対象に、街全体および各代表的な建築の内外のフォトグラメトリー調査を実施した。ヨルダン・アッサルトではイスラム圏の伝統的な建築のつくり方がみられ、特に宗教上の観点から生まれたsutraTaharaと呼ばれる空間の作り方のコンセプトが現存していることを確認した。一例として、"Shanasheel" "Mashrabiya"のように、外光を取り入れ、室内から外だけを見る機会を作るために半開きに設計された窓がある。これは経典として定義され、室内の快適性を保つために非常に重要だと考えられている。現地民へのヒアリングや、現地研究者との知識共有からも、屋内からは屋外の景色や光を取り込むように開けられているが、屋外からは屋内の人が可視できないように設計することを意識づけていることが読み取れた。日本への展開の手がかりとして、窓やドアなどの開口部のデザインに大きく転用性が見られることが調査データの概観から判明した。現代日本の住宅などを見ても、光・借景のために大きく窓を開けても、外からの視線を気にするため、カーテンで覆ってしまう、といった現実が多い中で、この外光を取り入れ、室内から外だけを見る機会を作るために半開きに設計された窓などの要素は大きな変更をしなくとも取り入れられる要素であると考えられる。今後も調査を進め、具体的に現代の日本においてどのように取り入れられるかを継続的に研究していきたい。