表題番号:2023C-432
日付:2024/03/27
研究課題遷移金属炭化物を用いた2次元物質の結晶成長と新機能開拓
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 基幹理工学部 | 教授 | 乗松 航 |
- 研究成果概要
- 2次元材料である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、次世代半導体材料として期待されている。本研究では、TMDの結晶成長における新技術として、遷移金属炭化物(TMC)を原料とする手法の開拓を目指している。具体的には、SiC単結晶基板上にTMCをエピタキシャル成長させ、そのTMC薄膜にカルコゲンを添加することにより、TMD/TMCヘテロ構造を作製する。近年、TMC自体もトポロジカル半金属やトポロジカル超伝導体の候補として注目されている。すなわち、2次元TMD/3次元TMCヘテロ構造によって、両者の持つ特異な電子状態や物性を掛け合わせることで、新機能の探索を目指す。2023年度には、SiC単結晶基板上に炭化タングステン(WC)薄膜を形成し、カルコゲンとしてSeを添加することで、高品質なWSe2の結晶成長を目指して実験を行った。具体的にはまず、パルスレーザー堆積法を用いてWC薄膜を形成した。基板温度1100℃、1x10^-5Pa程度において、比較的結晶性が良く、表面も平坦なWC薄膜が得られることがわかった。続いて、このWC薄膜に対してSe化処理を行うための装置を作製した。ロータリーポンプにより真空引きのできる管状炉を用いて、窒素ガスを流しながら、WC/SiC試料とSe粉末を同時に加熱した。加熱温度は500℃以上とし、昇華したSeがWC/SiC基板上に堆積してWSe2形成反応を起こすことを期待した。得られた試料に対してX線光電子分光測定およびラマン分光測定を行ったところ、基板表面上にSeは検出されたものの、WSe2由来のラマンピークは検出されなかった。すなわち、今回の条件ではWSe2は形成されないことが示唆される。今後は、窒素ガスの代わりにAr/H2ガスもしくは真空中での加熱を行うことで、WSe2形成を試みるとともに、NbSe2/NbCヘテロ構造の作製も目指して実験を行う。