表題番号:2023C-398 日付:2023/11/06
研究課題フランス諸都市における都市化と住民組織の形成史ートゥールーズの事例を中心にー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 准教授 國府 久郎
研究成果概要
 フランスの都市では任意の住民組織である街区委員会が存在するが、日本の住民組織とは異なり各都市に見受けられるわけではなく、その歴史的起源や社会的役割も十分に研究が行われていない。これまでの一連の調査によりマルセイユやリヨンなどの大都市では、1890年代から街区委員会が形成され始め、都市化の過程で交通網の整備やその他のインフラ整備で、住民たちが決して受け身ではなかったことが明らかになった。
 本年はこうした大都市でみられた19世紀末からの住民の組織化が、より小規模の他都市においても生じていたのかを検証するために、フランス第四都市のトゥールーズで現地調査を実施した。結果としては、都市化の規模がマルセイユやリヨンほどではなかったトゥールーズおいては、住民たちからの請願書などは19世紀初頭より既に確認できたが、19世紀末や20世紀初頭において住民の組織化は生じていなかった。1920年代以降、第一次大戦の戦没者慰霊碑の建築の際にいくつかの街区で住民の組織化の傾向が見受けられ、1930年代まで組織が存続した場合もあった。本格的な住民の組織化は、都市化の問題が顕著になった1960年代から1970年代であったことが解明できた。