研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 教育・総合科学学術院 教育学部 | 教授 | 西田 文信 |
- 研究成果概要
19世紀から20世初頭にかけて欧州の探検家によるアジア遠征の報告書の中に、訪問した現地語の語彙を収集・記録したものがいくつか見られる。西南中国の調査記録のうち言語についての情報が比較的豊富な資料としてHodgson (1853)、Baber(1882)、Johnston (1908)、Davies (1909)等が挙げられる。本研究は清末にフランスの学者・探検家アンリドローヌが3年かけて四川省・貴州省・雲南省を踏破したした際に記録した45の言語・方言の328項目にわたる対照語彙集であるLangues des peuples non chinois de la chine, par le commandant d'Ollone, le Capitaine de Fleurelle, le Capitaine Lepage, le Lieutenant de Boyve (Documents scientifiques de la Mission d'Ollone, 6) Ernest Leroux (1912) 所載の諸言語語彙について、それらが依拠する言語・方言の諸相を明らかにするための基礎的研究である。
今年度は先ず序文をフランス語から邦訳し、本書執筆の意義、歴史的背景等を考察し、その後収録されている各語彙に関して中国で出版されている地誌やこれまで出版された当該地域で話されている諸言語の文法書・語彙集・関連論文や《藏缅语语音和词汇》(1991)、《藏緬語族語言詞匯》(1992)等と照らし合わせる作業を進めた。その結果、特に現在中国で藏羌彝走廊諸語(曾ては川西民族走廊地域と称された)の諸言語についての考察が進んだが、本書記載の語彙はかなりの精度をもって記述されていることが分かり、現在話されている語形との比較により、音韻変化についてについての知見を得ることができた。
当初の予定では特に所載のナムイ語語彙の基礎方言となった地点の同定までを考えていたが、時間の制約により今回の研究期間まではそこまでは達成することができなかった。次年度以降も引き続き当該課題に取り組み、ナムイ語を含めてより多くの地点の同定を試みていく所存である。
研究成果として、2024年9月19-20日にイタリア・ローマ第3大学にて開催予定のThe 12th International Conference of the European Association of Chinese Linguistics (EACL-12)にて、A lexical study of Langues des peuples non chinois de la chineと題して研究発表し、論文化する予定である。