表題番号:2023C-383 日付:2025/09/15
研究課題大脳皮質ニューロンの空間配置を規定する分子・細胞基盤の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 花嶋 かりな
研究成果概要
哺乳類特有の脳組織である大脳皮質は、6層構造を基本単位として多様なニューロンが秩序正しく配置されることで高度な情報処理を可能としているが、その空間配置を決定する分子・細胞基盤については未解明な点が多い。本研究では、大脳皮質神経幹細胞から時期特異的に産生されるニューロンを遺伝学的に標識・追跡するシステムを用いて、新生ニューロンの移動動態や空間配置過程を解析し、さらに単一細胞遺伝子発現解析と機能操作により配置を規定する新規分子群を同定した。その結果、ニューロンの空間配置は一様な過程ではなく、特定の少数細胞群が独自の移動様式を示し層構造の秩序形成に寄与すること、また胎生期に産生される神経前駆細胞の特性が分化後のニューロン配置と密接に結びつくことを明らかにした。これらの成果は、大脳皮質の秩序ある構築を支える基本原理の一端を示すとともに、空間配置の破綻が発達性脳疾患の病態に関与する可能性を示唆しており、今後は同定した分子群を介したシグナルネットワークの解明を通じて臨床応用へ展開することが期待される。