表題番号:2023C-379 日付:2024/04/03
研究課題エリザベス・ギャスケルの『妻たちと娘たち』にみるヒロインのケア行為
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 助手 星 志乃
研究成果概要

「ケア」は英米文学分野を中心に、学術界において近年注目が集まってきているテーマである。本研究では、19世紀英国を代表するリアリズム作家の一人であるエリザベス・ギャスケル(Elizabeth Gaskell, 1810-65)の遺作となった長編小説『妻たちと娘たち』(Wives and Daughters, 1864-66)のヒロイン、モリー・ギブスン(Molly Gibson)のケアを焦点に当て、モリーの成長について検証している。本年度は一次資料である小説の講読を行った。その結果、モリーはレイディ・ハリエット・カムナー(Lady Harriet Cumnor)をはじめとする複数の登場人物との関わりにおいてケアの実践を示していた。また、モリーの父親で医師のミスター・ギブソン(Mr Gibson)も、高い道徳的水準を持つ人物として描かれていることが講読を通じて明らかとなった。早くに母親を亡くし、父親と二人で生活していたモリーに対する父親の影響は大きいため、今後本研究を遂行するにあたり、ミスター・ギブスンの医師としての医療行為だけではなく、ケア行為についても検討していくことが議論の発展につながるのではないかと思われる。一次資料の読解・講読以外には、「ケアの倫理」の提唱者として有名なキャロル・ギリガン(Carol Gilligan, 1937-)の著書『もうひとつの声で』(In A Different Voice, 1982)をはじめとする、ケアの倫理や実践、文学におけるケアに関する文献の収集を進めた。