表題番号:2023C-378 日付:2024/02/25
研究課題ジャズ・スタディーズの発展に向けて――人種およびジェンダーの視点から
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 佐久間 由梨
研究成果概要

2023年度特定課題研究助成費により、ジェンダーの観点から日米のジャズ史を再考するというプロジェクトに着手することができた。具体的には、日本の占領期におけるジャズと、アメリカの1970年代以降のブラック・フェミニズムとジャズとの関連性を調査した。論文を出版することはできなかったが、3回の学会発表を実施した。

2023年6月にアメリカで開催されたIASPM(International Association for the Study of Popular Music)の国際学会では、占領期日本のジャズに影響を受けた歌謡曲が、アメリカ化されゆく日本および、戦後の混乱と貧困の中を生きた日本人女性の経験を描き出していることを論じた。

2023年10月に開催された日本アメリカ文学会全国大会では、「ブラック・フェミニスト・ジャズ・スタディーズ―Farah Jasmine Griffin, Hazel V. Carby, Angela Y. Davisによるジャズの家父長制批判」というタイトルで、アメリカのブラック・フェミニスト批評家たちによるジャズ批評の特色について考察した。黒人であり女性でもあるという立ち位置から、ブラック・フェミニストのジャズ批評家たちが、男性ジャズ奏者や男性ジャズ批評家への「敬意と批判」という相克する感情のなかで執筆していることを論じた。

2023年12月に開催された日本ポピュラー音楽学会全国大会では、「江利チエミと占領期日本のジャズ/売春――ジャズ受容史研究とフェミニズム研究を交差させるとき」というタイトルで発表し、占領期日本のジャズをジェンダーから研究する際、フェミニズム研究とジャズ研究を学際的に交差させる方法論が有効であることを提案した。

本研究女性により、これまで男性主導の音楽とみなされてきたジャズに、日米の女性たちがどのように関わってきたのか、さらに、男性主導のジャズをジェンダーやフェミニズムの観点から再考するための研究の方法論をいかに見出すべきかという問を探求できたことは大きな収穫である。