表題番号:2023C-333 日付:2024/04/02
研究課題19世紀から20世紀初頭のルーマニア「国民音楽」の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 助手 三浦 領哉
研究成果概要
本研究は、19世紀から20世紀初頭のルーマニアにおけるいわゆる「国民楽派」運動の展開をとくに音楽思想の側面から研究するものである。ルーマニア音楽史はそれ自体が国外においてほとんど研究されておらずルーマニア語以外による研究も同様にほとんど存在しない。このような状況においては本国におけるルーマニア音楽史研究の歴史を把握し先行研究の整理を行うことが研究の基礎となる。その上で該当する時期において「国民音楽」運動が本地域においてどのような音楽思想(哲学・美学)の議論の上に成立したかを探ることが本研究の課題であった。
具体的な研究方法としては、第一に法定納本図書館であるルーマニア国立図書館に所蔵されている音楽史研究文献を調査するとともに、現地においてその内容を確認し文献目録の作成を行ったが、法定納本図書館である国立図書館にも所蔵資料に欠落があることが明らかとなった。これは1989年ルーマニア民主化革命の際の被害によるものであり、首都以外の大学図書館・公共図書館などにも資料を求める必要性が生じたことにより当初の計画よりも研究の進捗に遅延が発生することとなった。
その上で第二に、ルーマニア「国民楽派」運動における音楽思想の展開について一次資料にアクセスし詳細に検討を行った。これにより「19世紀後半のルーマニアにおける『国民音楽』思想をめぐる諸問題 — 『ルーマニア国民音楽』の袋小路」のタイトルで論文を執筆した(現在投稿先を選定中)。本論文ではルーマニアにおいて「国民音楽」の確立が遅れた原因が、国内における音楽思想をめぐる議論の欠乏にあったことを明らかにした。また本論文を元に19世紀後半のルーマニアにおける音楽をめぐる言説をさらに詳細に分析し、当該地域の歴史的な特殊事情とそれによる他地域との差異を明らかにする研究発表を、2024年6月に韓国で開かれる国際学会にて行うことが決定している。