表題番号:2023C-332 日付:2023/11/08
研究課題津田左右吉における「合理」的思考と中国思想研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 講師 長谷川 隆一
研究成果概要
 本研究は、津田左右吉の中国思想研究に、「合理」という語がどの程度、どのように使われているのかを明らかにすることを目的にしたものである。
 津田左右吉(1873~1961)は、中国・日本の思想を広範にわたり考究した研究者である。津田の「合理」については、すでに増淵龍夫「日本近代史学史における中国と日本⑴」(同氏『歴史家の同時代的考察について』岩波書店、1983年、43ページ、初出は1963年)に、「聖典化された個々の儒教文献や諸子文献の中に混入している、時代と系統を異にするいくつかの思想的要因と考えられるものを、津田の合理主義によって、いりわけ分析し、比較考察することによって、それぞれの文献の成立年代を推定すると共に、このような文献批判を通じて、そこに、それぞれの時代と社会にもとづいて生じたいろいろな思想的要因が、一つの思想に合流していく過程として、先秦時代から漢代にいたる儒教形成の過程を、中国に特殊な関係として、解明しようとするものである」とある。増淵は津田の「合理」主義を、研究方法上のものとして扱っている。しかし、津田は研究方法上の場合以外、資料の「読み」においても、「合理」の名の下に、解釈を施している。ただ、客観的に見れば、津田が「合理」的として解釈している資料は、曲解に思える箇所が存在する。本研究はこれを踏まえ、津田の中国思想研究に現れる「合理」という語を丹念に収集することに専心した。事例数が想定よりも膨大であったため、考察・分析を仔細に行うまでには至らなかった。成果については、順次学会報告・論文発表の形で公表していく予定である。