表題番号:2023C-330 日付:2024/03/31
研究課題崔南善の蔵書を通してみる近代東アジア人文学の形成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 河野 貴美子
研究成果概要
 本研究は、現在高麗大学校に所蔵されている崔南善(1890~1957)の蔵書「六堂文庫」を研究対象として、崔南善が生涯をかけて日本、韓国、中国など各地で行った蒐書の状況、およびその蔵書の特徴や意義を明らかにすることを通して、近代東アジアの人文学がいかに形成されたのかという問題に迫る新たな視座を得ることを目的として設定したものである。崔南善は、出版社新文館を設立して雑誌『少年』を刊行し、また朝鮮光文会を立ち上げて古文献の整理、刊行を行うなど、実にさまざまな活動を展開し、韓国の「近代化」を牽引した重要人物である。そしてそれら崔南善の活動は、早稲田大学など日本への留学を経て培われた経験と密接に関連して行われたものであった。本研究の取り組みによって、高麗大学校との連携のもと、崔南善の蔵書を通して、東アジアにおける学問の近代化の実態を探究していくための共同研究の基盤を築き、研究をスタートへと導くことができた。
 具体的には、高麗大学校の研究者、また国内の朝鮮史、日本史の研究者とメールやオンラインによる打合せを重ねたうえで、2023年9月には高麗大学校において、高麗大学校漢文学科、同漢字漢文研究所、および高麗大学校図書館の研究者と直接対面し、研究の構想と具体的な計画を確認するとともに、「六堂文庫」の『蔵書目録』(高麗大学校亜細亜問題研究所、1974年)の複写を入手し、また、崔南善や近代朝鮮と日本にかかわる先行研究等を収集し、崔南善の蔵書と学問についての研究を進めた。本研究を含む形で応募した科研費は残念ながら不採択の結果となったが、その結果を受けてさらに2024年3月にも高麗大学校において研究計画について協議し、2024年夏に崔南善の蔵書と学問にかかわるワークショップを共同して開催することとした。現在はそのワークショップに向けて研究を継続しつつ、改めて外部資金の獲得に向けて準備を進めている。