表題番号:2023C-329 日付:2023/11/13
研究課題中世聖徳太子伝における秘事口伝の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 教授 吉原 浩人
研究成果概要
 2022年は、聖徳太子薨後1400年に正当し、数年前からこれを記念した法要や展覧会が企画された。ただ、聖徳太子信仰の豊かな側面のうち、太子伝をめぐる中世の秘事口伝については、荒唐無稽な内容であるため、史実に反するとして近代では斥けられ、一般にはほとんど知られていない。しかし今は語られなくなったそれらの言説にこそ、太子信仰の本質があると考える。聖徳太子信仰とは、実在した人間を観音菩薩として祀り、またさまざまな超常的な現象を、実際にあったものとして信じ仰ぐ行為である。秘事口伝が形成され流布する背景には、どのような理由があるのか、古代・中世の史資料や絵画の分析通じて解明することを目指した。本研究基盤形成では、早稲田大学総合研究機構日本宗教文化研究所で進めている『聖徳太子伝暦』の訳註・校訂作業に主宰者として参加し、論文・訳註を執筆するため、また太子信仰遺跡実地踏査のための諸経費として使用した。
 本課題の主な成果としては、以下のものがある。①2023年4月1日から5月28日まで、龍谷大学龍谷ミュージアムにおいて、「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年記念特別展「真宗と聖徳太子」が開催されたが、この企画段階から図録作成まで、協力・助言を行った。②この関連事業として、龍谷大学大宮学舎東黌101号大教室で開催された、龍谷大学世界仏教文化研究センター主催学術シンポジウム「聖徳太子と真宗の文化遺産―秘伝・図像と信仰の世界」において、「『聖徳太子絵伝』の秘事口伝-救世観音の転生と真宗-」と題して基調講演を行った。③早稲田大学エクステンションセンターにおいて、2023年度春学期において「聖徳太子信仰の中世―未来記と秘事口伝」と題し、全10回の講義を実施した。今後、上記の成果を論文・訳註として公表する予定である。