表題番号:2023C-321 日付:2024/02/18
研究課題働き方・稼ぎ方の変化に対する課税およびプラットフォーム企業の役割
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 渡辺 徹也
研究成果概要
 ギグワーカー、テレワーク、ジョブ型雇用等の出現をみてもわかるように、社会のデジタル化が進むにつれ就業形態が大きく変化してきている。本研究では、これら勤務形態や取引形式等の変化に所得課税がどのように対応しているか、あるいは対応すべきかを主に問うた。
 とりわけプラットフォームを利用した副業に関しては、申告漏れをはじめとして様々な問題があった。インターネットを使った個人の取引について申告漏れが生じていることは、令和に入る前から既に指摘されてきたが、それに加えて最近では、赤字の副業の場合、事業所得として申告することで他の所得と通算するケースが多発し、国税庁が防止に動き出した。前者は、主として申告をしない(無申告)という問題であるが、後者は、適正でない申告が行われている可能性を示している。本研究ではこれらの問題について一定の解決策を模索した。その際には、副業に対して本業とでもいうべき、会社員の勤務形態が時代とともに大きく変わりつつあることを前提に、給与所得のあり方についても再考をすべきときにきていることを示唆した。
 なお、デジタル社会における取引では、情報の収集やその扱いが生命線となる(テレワークにおいても、使用者は被用者の勤務状態を把握する必要がある)が、これは税務執行においても同様である。本研究では、令和元年度改正で新設された国税通則法74条の7の2を取り上げて、この規定が副業に関していかに機能するか(あるいはしないか)についても検討した。
 本研究が取り上げたものの他にも、メタバースやNFT(非代替性トークン)、さらにはロボット・AI課税の問題などがある。例えば、メタバース内の土地を譲渡した場合、所得税の納税義務が生じるのか。あるいは、AI技術の発達により、企業が多くの従業員を解雇すれば、所得税収が大幅に減少するがそれでもよいのか。これらの問題については、今後の課題としておきたい。