表題番号:2023C-317 日付:2024/04/01
研究課題雇用における宗教差別に関するEU裁判例の歴史的文脈の文脈の探究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 大木 正俊
研究成果概要
 本研究では、最近のEU雇用差別に関する裁判例を歴史的文脈から理解することを目的としていた。具体的には、フランスやベルギーなどで顕著に見られるライシテの思想について、特にフランスに着目しつつ、大革命時の公私区分が世俗、宗教の区分に置き換わること、ライシテ自体にも様々なアプローチがあることなどを念頭に、既存のEU裁判例の分析をおこなった。
 また、研究期間中(2023年)に、新たにEU裁判所から行政機関の労働者がおこなう職場でのヘッドスカーフの着用に関するOP v Commune d'Ans(Case C‑148/22)事件が出された。同事件判決は、一般論として、公的期間の職員に排他的中立性を求めることそれ自体が、(間接差別の正当化事由となりうる)正当な目的と評価されることを述べつつも、その公的部門の職員と宗教的信条との関係については各国に裁量の余地があり得ることなどに触れている。