表題番号:2023C-313 日付:2024/04/05
研究課題不動産公示制度における「権利資格保護要件としての登記」の位置づけの検討
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 助手 水谷 賢
研究成果概要
本研究は、いわゆる「権利資格保護要件としての登記」が不動産公示制度におけるいずれの機能として位置付けうるのかに関して、主に次の2つの方向から検討した。すなわち、①「権利資格保護要件としての登記」の位置づけに関する先行研究の検討、②「権利資格保護要件としての登記」と土地公示制度の「情報提供」の機能との関係の分析、である。まず、①の方向性においては、とりわけ、松尾弘の研究に着目した。そこでは、潜在的な権利復帰原因等をもつゆえに元々の完全な権利者とも無権利者ともいえない者から権利を取得した者の権利取得の確定と元々の権利者への権利復帰の否定が問題になる場合についての、権利帰属の決定ルール、すなわち第三者保護のルールとして、「権利保護資格の法理」が妥当するとされた。私は、この位置づけを基礎とした検討が求められることを確認した一方で、必ずしも、権利資格保護法理という説明の必然性は明らかにされていないと考えた。すなわち、権利を主張するためには登記くらいしておかなければいけないという素朴な発想の根拠については、なお検討すべき課題であるということである。次に、②の方向性においては、フランス土地公示制度の重要な機能の1つとしてあげられる「情報提供」の機能について、権利資格保護要件としての登記が第三者保護法理であるとするなら、第三者への情報提供と考えることによって結びつけることが可能になるのではないかと考えた。ただし、このように考えた場合、対抗要件としての登記についても、権利帰属のルールである以上、第三者保護法理の側面がないとはいえず、情報提供の機能をもつものと考えられるように思われる。すなわち、「情報提供」という概念から土地公示制度を考える場合、単に権利資格保護要件としての登記などの一場面に限定されるものではなく、むしろ、土地公示制度全体に及びうるということが明らかになった。