表題番号:2023C-309 日付:2024/04/08
研究課題過疎地における絆とコミュニケーション
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 武黒 麻紀子
研究成果概要
本課題は、自殺希少地域トップ 10に入る徳島県海陽町(旧海部町)でのエスノグラフィーを軸に、知り合いに囲まれた地域社会で連綿と繰り返される日常のやりとりの中で、人がどこでどう繋がって(いない)のかを言語人類学的に調査した。「緊密すぎない、ゆるやかなつながり」(岡 2012)があるとされる当該地域のコミュニケーション上の特徴と、それが生み出す連環とウェルビーイングとの関わりを言語コミュニケーションの観点から明らかにすることを目標に、本研究は漁港地区を中心にインタビューや参与者観察、そして相互行為の分析調査を行った。3度にわたる調査により、(1)すれ違いざまの挨拶率は100%でSenft(2014)の トロブリアンド諸島と似た交感性が存在する可能性、(2)コミュニケーションではポライト ネス理論(Brown & Levinson 1987)“Bald on record”あからさまな面子威嚇行為が極めて頻繁、(3)町の空間配 置(路地や空き地、椅子やベンチ)が促進する交感的コミュニケーション頻度の高さ、(4)毎朝必須の墓参り実践と世間話による安否確認、(5)接触やふれあいへの憧れの欠如、が見えてきた。この成果は第18回国際語用論学会で発表した。