表題番号:2023C-303 日付:2024/02/12
研究課題家庭向け電力市場における非線形価格付けとエネルギー補助金に関する実証分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 准教授 遠山 祐太
(連携研究者) 早稲田大学 Assistant Professor Ngawang Dendup
研究成果概要

本研究の目的は、一般家計向け電力市場における非線形価格体系が、家計の電力消費行動、消費者厚生、そして電力生産に伴う環境外部性に与える影響を実証的に評価することである。一般家計向け電力市場においては、非線形価格体系と呼ばれる、電力消費の単位料金(1キロワットアワーあたり料金)が電力消費量に応じて逓増するという特徴を持つものが多くの国で採用されている。この体系の下ではより電力を多く消費する家計(すなわち高所得家計)が高い価格に直面することとなり、分配の観点からの妥当性が主張できる。また、電力節電を促すという役割も持つため、二酸化炭素排出などの環境外部性の観点からも支持される。しかしながら、非線形価格体系が機能するためには、消費者が価格体系を正確に認識した上で電力消費の意思決定を行うという「合理性」が欠かせない。過去の研究においては、非線形価格体系において消費者がヒューリスティックに行動しているという点がしばしば指摘されている。

以上を踏まえて本研究では、消費者の非合理性を加味した電力需要モデルを構築し、データを用いたモデルパラメタの推定方法及びシミュレーション方法を考案した。その上で、実証分析として、ブータンにおける農村地域を対象とした家計向け電力の補助金プログラムに着目した。ブータンの電力会社より取得した家計レベルの電力消費データ及び、上述のモデルを用いて当該プログラムの消費者厚生への効果についてシミュレーション分析を行った。

本研究については、国内の各種ワークショップ及び日本経済学会秋季大会、及び香港で開かれた国際学会 APIOC 2023で発表を行った。