表題番号:2023C-296 日付:2024/04/19
研究課題ニュース・ブログサイトの偽情報リスクアセスメントの研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 瀬川 至朗
研究成果概要
今回は、日本における誤情報・偽情報の全体像を知る手がかりとして、NPO法人ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のClaimMonitor(CM)というシステムで得られた疑義言説のデータセットを分析した。
CMは、自然言語処理と機械学習を利用したFCC(Fact Check Console)システムにより疑義言説候補を自動抽出、それらの情報を元にFIJのモデレーターが人の手で選別して初期調査を行い、疑義言説としてファクトチェック組織に提供するシステム。FIJによると、新しいCMシステムを2019年12月に稼働させたという。今回は2019年12月~21年12月の2年と1ヵ月を対象にした。
その間にリストアップされた疑義言説は5010件で月平均200件。カテゴリー分類をしたところ、Covid-19が37%と一番多く、続いて政治(15.2)、国際(12.9)、社会(10.9)、選挙(4.6)、科学・環境・IT(4.5)、経済(3.4)、医療・健康(3.2)、文化・芸能(3.1)、スポーツ(2.9)、気象災害(1.8)、ワクチン=Covid-19以外=(0.5)となっている。
時系列変化をみると、Covid-19の疑義言説数は20年4月にピークがあり、その後増加と減少を繰り返しており、緊急事態宣言や流行の波に関連する部分がみられた。また、選挙の疑義言説数は20年の米大統領選挙、21年の衆院選挙時などにピークがみられた。
 次に疑義言説の発信媒体別に分類した。トップはソーシャルメディアで76.2%。約4分の3を占めている。続いて伝統メディア(15.6)、デジタルメディア(1.9)、個人サイト/匿名サイト(1.8)、演説・講演会、ビラ・チラシ(0.8)、企業・団体のウェブサイト(0.6)、公的機関のウェブサイト(0.5)、ポータルサイト(0.5)、その他(0.5)となっている。また、「不明・削除済み」が1.6%あった。伝統メディア発の誤情報・偽情報は一般に少ないとされている。にもかかわらず、CMの疑義言説において15.6%を占めた。この数字が誤情報・偽情報の全体状況を反映したものかどうかについては、今後さらに詳細な分析を進める必要がある。

※本研究はJSPS科研費19H04425の助成を受けたものです。