表題番号:2023C-289
日付:2024/04/02
研究課題潜在構造による多種属性を考慮可能な協調フィルタリング手法に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | データ科学センター | 教授 | 小林 学 |
- 研究成果概要
- 近年,Eマーケティングなどにおいて顧客(ユーザ)の商品(サービス)に対する消費行動(WEBの閲覧履歴や購買行動など)を数理モデルとして表現し,過去のデータから今後の顧客の消費行動を予測する協調フィルタリングが盛んに研究されている.一方,実際のデータとしては消費行動の他に各顧客の属性データや各商品の属性データなどが存在し,これらも消費行動には間接的に影響を与えていることも考えられる.しかし,このような多種のデータを統一的に扱う研究は数少ない.本研究ではこの顧客・商品・消費行動それぞれの観測変数に対して,各顧客の潜在変数ベクトルと各商品の潜在変数ベクトルが存在するものと仮定する.そして顧客の潜在変数ベクトルから顧客の観測変数が生成され,商品も同様とする.この関係は因子分析のモデルと等価と設定する.一方顧客の商品に対する消費行動は,それぞれの潜在変数の内積から生成されるものとする.例として,消費行動が量的変数であれば潜在変数の内積に誤差が加わるモデルとし,消費行動が2値の質的変数の場合,潜在変数の内積が質的変数の対数確率比となるモデルとすることができる.この提案方法により,多種多様なマーケティングデータを統一的な数理モデルで表現することが可能になり,生成・観測メカニズムの構造推定問題や未観測の消費行動に対する予測問題などを統計的に扱うことを可能とする.本研究ではさらに,この数理モデルに対する各種パラメータの推定,並びに潜在変数の事後確率推定のための繰り返しアルゴリズムを提案した.結果的に実験によりパラメータの推定精度並びに予測精度を高めることができることを確認した.今後の課題として,構造推定に対するモデル選択における一致性の検討が挙げられる.