研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 高等研究所 | 講師 | アンダソヴァ マラル |
(連携研究者) | 高等研究所 | 講師 | フィットレル・アーロン |
- 研究成果概要
本研究課題の目的は〈うた〉とそれを担う者たちに注目をあて、その宗教なるものとのかかわり方を神祇信仰、仏教、イスラーム教、キリスト教といった幅広い文脈から読み解くことであった。ここで用いる〈うた〉という用語を歌謡、和歌、漢詩、呪詞、祝詞、聖歌・賛美歌、宗教歌謡・音楽、叙事詩などのようにリズムをともなった言語活動を指し示すものととらえた。本課題を実施するにおいて2回のシンポジウムを開催した。
第一回シンポジウム「日本の〈うた〉―古代と中世―」では日本列島に注目をあて、『古事記』に見られる〈うた〉の起源からはじまり、中世における和歌の変遷を見届けることができた。4名の講演者による発表は〈うた〉の起源と神への祭祀、〈うた〉と仏教信仰・儀礼の関わり方が古代と中世のテクストをどのように意味づけるのかをよみ解いたものであったといえる。
第二回シンポジウム「受容に見る〈うた〉と信仰」では、仏教の他、キリスト教文化圏とイスラーム文化圏にも視野を広げ、翻訳と受容を重要なキーワードとし、検証をこころみた。具体的には、それぞれの宗教の〈うた〉の他文化圏における翻訳、受容、変容と、後世における継承を通して、その特徴などに関して明らかにした。本シンポジウムでは、日本の和歌の外国語への翻訳のみならず、キリスト教古典詩の日本語訳の歴史、トルコのシェイフ・ガーリプの『美と愛』という叙事詩における信仰と創作、現代中央アジアのムスリム民衆生活の中のスーフィー詩の役割が重要なテーマとなった。
このように、日本列島における古代と中世のみならず、日本以外のキリスト教とイスラーム教に見られる多様な〈うた〉と信仰の在り方を見届けることができたといえる。2024年3月にシンポジウム報告書『〈うた〉と信仰』(アンダソヴァ・マラル、フィットレル・アーロン編、早稲田大学高等研究所)を刊行した。