表題番号:2023C-274
日付:2024/04/01
研究課題超幾何モチーフのレギュレーターと超幾何関数
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 本庄高等学院 | 教諭 | 根本 裕介 |
- 研究成果概要
- 本年度は前年度までに得られたHesse cubic曲線のレギュレーターと超幾何関数に関する研究と, 超幾何関数と虚数乗法をもつ楕円曲線のL関数の特殊値に関する研究を論文にまとめ, 投稿した. また, 本年度はレギュレーターの研究に加え, 代数的サイクルの研究を行ない結果を得た. 一般化BSD予想によると, 代数多様体の代数的サイクルはL関数の特殊値とも関係がある, 数論的に非常に重要な対象である. 代数的サイクルの重要な例としてCeresaサイクルがある. 一般的な曲線のCeresaサイクルは非自明であることがCeresa自身によって知られているが, 具体的な曲線に対して非自明(非ねじれ)になることを証明することは難しい. Harris, Bloch, Kimura, Tadokoro, Otsuboは, 次数が1000未満のFermat曲線に対して, Ceresaサイクルが代数的同値を法として非自明になることを証明した. また, Otsubo, TadokoroはFermat曲線やその商のCeresaサイクルが代数的同値を法として非ねじれになるための十分条件を一般超幾何関数を用いて与えた. しかし, これらの条件は数値的に検証することが不可能である. 近年, Eskandari-Murtyは, 次数が7より大きい素数で割れるFermat曲線のCeresaサイクルのAbel-Jacobi像が非ねじれになることを証明した. 特に, Ceresaサイクルは有理同値を法として非ねじれである. 彼らの証明は, 曲線上の反復積分で生成される空間に定まる混合Hodge構造の拡大群に関するPulte, Kaenders, Darmon-Rotger-Solsらの結果と, Gross-Rohrlichによって構成されたFermat曲線のJacobi多様体の位数無限の点を用いることで証明される. また, 彼らは同様の結果がFermat曲線の商に対しても成り立つことを予想した. この予想に対して, ある仮定のもとで, 彼らの予想が正しいことを証明した. また, Otsuboによる結果を組みわせることで, Fermat曲線の商のCeresaサイクルの高次Abel-Jacobi像もまた非ねじれになることを証明した. これらの結果は近く論文としてまとめ, 投稿する予定である. 一方, レギュレーターの研究, およびそのp進類似に関する研究はあまり進展が見られなかったため, 次年度以降も引き続き研究を進める予定である.