表題番号:2023C-272 日付:2024/03/24
研究課題高等学校数学科における探究ベースによる学習活動の設計および実践
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 成瀬 政光
研究成果概要
 本研究の目的は,高等学校数学科の授業に探究型授業をいかに導入できるかを検討することである.とりわけ,学習する内容が定められ,探究を前提としない“通常”の科目(本研究では「数学Ⅲ」)において,どのように探究型授業を設計・実践し,その実践においてどのように数学的知識が生じうるのかを検討する.こうしたことを検討する際に,本研究では教授人間学理論 (ATD) を拠り所とし,探究をStudy and Research Path (SRP) という枠組みで捉える.本研究の一連の作業は,(1) 基本認識論モデルの構築;(2) 基本認識論教授モデルの構築;(3) 基本認識論教授モデルを参照した授業設計と実践;(4) 授業設計可能性の検討,である.
 今年度の作業は (2) および (3) である.(2) では,定積分がどのような知識であるかという“本性”を示す基本認識論教授モデル(成瀬・宮川,2023)を参照し,それらの知識がどのように発生し,学習されうるのか示す基本認識論教授モデルを構築した.このモデルは定積分という知識が数学史上でどのように発展したか,授業においてどのように学習されうるのかを示すものである.(3) では,(2) で構築されたモデルをもとに授業設計し,その授業を高等学校において実践した.実践を通じて,生徒の探究の過程はおよそ基本認識論教授モデルどおりであり,そのモデルは授業設計を可能にするという示唆が得られた.一方で,定積分の理論的背景を追究する段階については,このモデルではカバーできない部分があったため,授業設計の際には何らかの視点から精緻化する必要があるという課題も明らかとなった.この点については,改めて授業設計の方法を検討し,実践を重ねることとする.
 今年度の作業で得られた成果は,国内の数学教育学会の口頭発表および論文投稿によって敷衍した.