表題番号:2023C-271 日付:2024/04/05
研究課題公民科の授業で「表現の自由」をどう教えるか
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 羽田 真
研究成果概要

本研究課題においては、特に公民科の授業において「表現の自由」をどう教えるかを理論と実践の両面から検討した。背景には、今なお続くロシアのウクライナ侵攻がある。プーチン政権に対するロシア国民の高い支持率は、政権とメディアが一体となったプロパガンダの拡散、独立系メディアや外国SNSへの厳しい統制によって維持されている。政府・ロシア軍に関するフェイクニュースを流布すると禁固刑をもって処罰するという法案も成立した。このようにして情報を統制し、悪である西側諸国の脅威からロシアを守るために軍事行動が正当化されると国民の見方を誘導している。ロシアによるウクライナ侵攻の例に限らず、戦時には報道統制がつきものといえる。

すなわち、平和で民主的な国家を維持していくためには、表現の自由の価値について理解し、国民はその制約に対して敏感でなければならないといえる。しかし、憲法教育の中核をなすはずの公民科において、表現の自由の価値は十分に教えられていない。

本研究では、学習指導要領と教科書の記述を分析し、実際の授業実践を通じて生徒の思考や反応を検証した。表現の自由の制約が問題となる架空の事例を用いて議論を行い、表現の自由の価値について理解を深めることを目指した。生徒にとって身近な事例を考案することで、「自分事」としてとらえられるようになったと思われる。

また、日本と類似した教育制度・教育課程をもち、民主主義・表現の自由といった価値を共有し、かつ東アジアの隣国でもある韓国を比較対象に研究を行った。特に高等学校「統合社会」の教科書や授業の分析を進めた。研究の過程で、韓国では、表現の自由の価値について授業で扱われているほか、体験型の施設による教育が広く普及していることが分かった。これについては更に検討を行い、近い将来に成果をまとめ、発表したいと考えている。