表題番号:2023C-263 日付:2024/02/02
研究課題事前実験課題を課した波動分野のJiTT型STEAM教育プログラムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 小川 慎二郎
(連携研究者) 西南学院高等学校 教諭 柴崎幸貴
(連携研究者) 東京大学 非常勤講師 滝川洋二
研究成果概要
【概要】科学の「有用性」や「応用」への理解が低いといった問題を解決し、日本の中等科学教育を新たな段階に引き上げるため、講義前に家庭でミッションに取り組み、その結果や考えを共有した状態で講義に臨むというJiTT型のSTEAM教育プログラムを開発した。
【背景】日本の科学教育の問題点として「科学の有用性が理解されていない」「基礎知識はあるが応用ができない」といった点が国際調査の結果を元に明らかになっている。また、学校で学んだことを羅針盤としてその先の人生で活用する「生徒エージェンシー」の実現が世界の教育のトレンドとなってきており、卒業後も使える知識や技術を会得させる重要性が高まっている。また、JiTT(Just-in-Time Teaching)等の手法によって、学習者の考えを講義前に把握することが、学習効果を大きく高めることが認められている。
【成果】「物理法則の理論」と「実生活での応用」を体験的に学ばせるために、これまでの研究で開発してきた事前家庭実験を課したSTEAM教育プログラムを発展させ、波動分野において講義外で取り組める実験課題を課したJiTT型のミニ実験・課題シリーズを開発した。また、研究の成果を日本物理教育学会の研究大会で口頭発表することにより、他研究者から改善点についての知見を得ることができた。
 この研究により、次の3点の成果があった。1)学習者の動機づけと同時に、講義前に学習者の状態を教員が把握することで、精度の高い講義による深い概念理解が可能となった。2)生徒の端末を活用して家庭でも実験に取り組ませることで、生活の中に科学的な思考や分析方法が根付く機会を創出した。3)学習した手法やツールを講義後も活用できることにより、科学の有用感の向上や生徒エージェンシーの実現に貢献した。
【課題】授業前の課題と授業で学ぶ物理概念の間の整合性がうまく取れていない課題がいくつかあるため、それらの関係性を再定義し、課題の質を向上する必要があると考えられる。