表題番号:2023C-257 日付:2024/04/05
研究課題幕末・明治初期の佐賀藩が有した製鉄・鋳物に関する技術の分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 神代 瑞希
研究成果概要
幕末・明治初期の佐賀藩が有した製鉄・鋳物に関する技術について、昨年度に引き続き調査および研究を継続した。
幕末期の佐賀藩は、諸外国の文化や技術を先駆けて取り入れた、日本において高い科学技術力を有した数少ない藩であった。そうした背景には、出島の警備を担当していたことで最先端の情報が入手しやすい地理的な要因や藩主鍋島直正の鋭い先見性も影響したが、高い専門性を有する藩士たちの存在も影響した。例えば製鉄分野においては、御用鋳物師をはじめとした技術者や翻訳者たちの取り組みが反射炉の建設にいち早く成功し、和製大砲を鋳造する技術力を保有することに関与した。本研究では、とりわけ御用鋳物師の一家系である谷口家について焦点をあて、昨年度より引き続いて資料収集および文献調査を実施した。谷口家は御用鋳物師として技術を蓄積していた一族で、特に11代当主は幕末・明治期における製鉄・鋳造面で貢献した。その技術力は明治・大正期までも存続し、鋳鉄管や美術鋳造など、多分野で社会に貢献し県内一の規模で展開していた。そうした谷口家の製鉄・鋳物に関する幕末・明治期の技術を明らかにすべく調査した。実地調査により、佐賀県立図書館の郷土資料室およびデータベースより資料を閲覧・収集して明治期の関連資料等を一層収集することができた。また、佐賀県内外における寺社仏閣に現存する谷口家が関与した鋳造物を現地調査してデータを集めることができ、研究者とのディスカッションを通して意見交換も実施することができた。佐賀大学地域学歴史文化研究センターでは資料閲覧や反射炉関係の調査報告書等を得ることができた。また、佐賀藩以外の反射炉の調査として現存する韮山反射炉を訪問し実物や展示により見聞を深め比較した。現地での調査や情報の収集を今後も継続する必要があるため引き続き調査を継続して蓄積した研究・調査内容を整理し発表する。